猿之助と愉快な仲間たち「森の石松」
久々の観劇へ行ってまいりました。
このところ清水次郎長を追っていたせいか、気になっていた舞台「森の石松」です。
脚本:横内謙介
脚本協力:嘉島典俊
演出:市川猿之助
2022年4月13日~21日
六本木トリコロールシアター
歌舞伎なら市川猿之助さんが好きなわたしは(といってもまったく詳しくありません!)、清水次郎長の子分として有名な森の石松が取り上げられるお芝居と知って、スワッと飛びついて行ってまいりました。
六本木シアタートリコロールは初めて。六本木駅を降りて、芋洗坂をてくてく下っていくと真新しい劇場。2018年開場。200席程度で舞台と客席が近く、役者さんの息遣いまで感じられるような臨場感あふれる劇場でした。
お芝居の内容をあまり確認せず行ったのですが、現在コロナ禍で困窮する劇場「シアター停車場」と俳優、関係者と、劇中劇で上演される「森の石松」を入れ子構造にした物語でした。
コロナ禍での苦しい劇場運営、舞台に立ちたくても出番がなくつらい思いを抱く役者さんたち。現在の演劇界をまさにそのまま舞台にのせ、そこで「森の石松」の稽古に励む幻想のような並行世界。
歌あり踊りあり、毎日変わる特別ゲスト、アドリブ、わいわいと進むエンタメ性の強い舞台で、笑いや拍手、手拍子が自然と客席から起こりました。
お目当ての森の石松、そういえば講談というより浪曲での方が石松代参や三十石船はおなじみなわたし。三十石船の大きさや乗り合いの人たちの距離感など、こうしてお芝居で見てみると発見があります。それに、次郎長は長命でしたが、子分たちはどうだったのだろう?と考えたことがありませんでした。なので、石松が若くして亡くなっていることにショックを受けました…。侠客で長命だったという方が珍しいのかもしれませんね…
踊りも素敵でした。わたしはコンテンポラリーも古典も、ソロも群舞も、踊りならどんなものも割と好きです。なので、いろいろなタイプの踊りも観られて、「ああ、踊りを見るのが好き」と心の中で思いつつ、勧進帳の富樫みたいじゃん!と自分で自分に突っ込んでみたり、そしたら鈴本で聴いた一龍齋貞橘先生の勧進帳かっこよかったな~と思い出したり。
次郎長ものは講談で聴く荒神山がやっぱりすごいんだよな。だいぶ前だけど、上野広小路亭で聴いた神田春陽先生の荒神山長講には圧倒された!とか。
お芝居を観ながら高揚しつつ、いろんなことが刺激されてフルスロットルな脳内。
そんな中、登場した市川猿之助さん。
近い!
顔が大きい!
派手な化粧や衣装が映える!
さすが歌舞伎役者さんだ、と感激ひとしお。
わたしが観劇した日のスペシャルゲストはカマキリ先生こと市川中車さん。
カマキリ先生が大好きなので(「昆虫すごいぜ!」のタガメ回は永久保存版です)、これはうれしかった。
「猿之助と愉快な仲間たち」とは本当その通りで、みなさん息がぴったりでたのしそう。それが客席にまで伝わってきてお芝居も弾むようでした。お芝居は仲間がいなけりゃ始まらない。講談の独り高座も、仲間同士で芝居を作り上げるのも、仕様はまったく違うけれどどちらも本当に美しい。そう感じた観劇でした。
劇後にはアフタートークもあり、このお芝居の理念や劇界の現状、行きたくても行けないお客さんの内情もくみ取って、「一緒に盛り立てていきましょう」との猿之助さんの言葉が響きました。
みなさまどうもありがとう。
そう思いながら芋洗坂をゆるゆる上りながら帰途につきました。
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