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わたし

新田の伊七と神田伯龍 その1(発端)

講談「天保水滸伝」で魅力的な挿話があります。

笹川方の用心棒、剣豪・平手造酒。その太刀筋の鮮やかさ、早業を示すエピソードとして登場するのが新田(しんでん)の伊七(いしち)。

新田の伊七は飯岡方のひとりで、笹川の大喧嘩の際にも同行。平手造酒に左手の小指と薬指を斬られた。平手の太刀筋が鮮やかすぎて、指を落とされたことを帰りの船の中でやっと気づいたという。

この新田の伊七、七十過ぎまで生きた。

後年、その伊七が佐原(さわら)の寄席に上がった神田伯龍を訪ね、平手に斬られた傷を自慢したという。


講談の読み物の中でしか存在しないと思っていた話が実在の講談師につながってくるという、なんともワクワクするエピソードです。


新田の伊七

佐原の寄席

神田伯龍


具体的な人名や場所が出てくるこのエピソードですが、講談「天保水滸伝 平手の最期」の中で紹介されることが多いようです。※1


このエピソードについて、対談の中で神田愛山先生はこうおっしゃっています。※2

伯山「新田の伊七の話は本当なんですか?」

愛山「講談本に書いてあったよ」

伯山「じゃあ嘘ですね(笑)」


伯山先生が笑い話で落としていますが、本当のところどうなのでしょう?


もう少しこのエピソードに踏み込んでみたい。

そう思いました。

そもそも本当の話なの?

真偽はさておき、ちょっと調べてみようじゃないの。


・新田の伊七ってどんな人?

・何代目の神田伯龍なの?

・佐原の寄席ってどこ?


素朴な興味から出発した調べもの。

数回にわたってご紹介してきたいと思います。


史実とフィクションのはざまでたゆたってみよう。

先ずは、時代と出来事の整理から始めてみましょうか。


<つづく>



参考資料

※1

神田伯山ティービー:神田春陽「天保水滸伝〜平手の最期」(6話目)【全7席】

18:00頃から


※2

神田伯山ティービー:神田愛山×神田春陽×神田伯山「天保水滸伝2020リレー」アフタートーク【後編】

3:10頃から



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