Q.12 飴色網代蹴出しの乗物ってなに?
Q.12 飴色網代蹴出しの乗物ってなに?
A.12 高位の人だけが乗ることを許された特製の駕籠
講談「徳川天一坊」では、御落胤成り代わりをたくらむ天一坊一味と江戸町奉行の大岡越前守との攻防が描かれます。その中で天一坊が乗る「飴色網代蹴出しの乗物」についてのやりとりが大きなポイントとなるくだりがあります(「網代問答」)。
さて、「飴色網代蹴出しの乗物」とはどのような物なのでしょうか?
なにが問答の論点となっているのでしょうか?
調べてみた
●乗物とは?
1. 人を乗せて運ぶ物の総称。馬、駕籠、輿など。
2. 駕籠のうち、引戸や内部に華麗な装飾をほどこしたものを区別して「乗物」という。将軍、公卿、高級武士等のみが乗ることを許された。
●江戸時代の駕籠について
駕籠は誰でもが乗れるものではなく、乗ることが許された身分とそれに応じた乗物の仕様が定められていた。そのため乗物(駕籠)を見れば、家格や当主の位を量ることが可能であった。最高級は将軍用の乗物で、四側を網代張りにして黒漆留塗にしたもの。
講談の中ではどのように読まれているか、今一度見てみましょう。
「白木の乗輿(のりもの)は天子、塗網代は將軍の乗興、飴色網代蹴出しの乗物は宮家の乗物でござる」
(講談倶楽部 編『徳川天一坊』日吉堂 明44.)
乗物に格があることがちゃんと言及されていました。
●実際どのようなもの?
※下図をご参照ください
これらは江戸時代の乗物の一例ですが、最高級の将軍の乗物として「四側を網代張りにして黒漆留塗にしたもの」となると、一番下の乗物が近いように見えます。
網代張りとは、竹や葦・檜のへぎ板などを斜めに組んだもの。斜めの柄のように見える部分です。黒漆というから、黒色であったことが伺えます。また担ぐ部分も塗棒となっているため、こちらも漆塗りの高級仕様であったのでしょう。
●飴色網代蹴出しとは?
飴色 : 水飴のような色。透明な黄褐色。
網代 : 竹や葦・檜のへぎ板などを斜めに組んだもの
蹴出し : 和装で女性が腰巻の上に重ねてつける布。裾よけ。
●以上より
総合して考えてみると、飴色をした特製の乗物(駕籠)。そして四側全体が網代ではなく、下部のみが網代仕様か。または、四側の下部の網代部分が飴色なのか?蹴出しの解釈が難しい。
そして意匠が寛永寺の輪王寺宮様と同じ、という天一坊の乗物。
格が高くかつ特別な方と同様の意匠の乗物とは一体どいうつもりか?と大岡越前は天一坊らを問い詰めるのですね。天一坊の行列を目にした時から、それは特別な乗物であることは誰の目にも明らかだったと思われます。
「徳川天一坊」の中に登場する乗物は、車輪のついた車ではなく、人によって担がれるタイプの駕籠だったことがわかりました。飴色の駕籠、というのがちょっと想像しがたいですが、似たようなものがどこかの資料館などで見られるといいですよね。
みなさまの情報お待ちしております!
(誤りの御指摘もいただけると幸いです)
<参考文献>
「角川古語大辞典」角川書店
「デジタル大辞泉」小学館
「日本国語大辞典」小学館
「国史大辞典」吉川弘文館
講談倶楽部/編「徳川天一坊」日吉堂(明44.10刊)
「日本社会事彙」上巻 経済雑誌社(明40,41刊)
櫻井芳昭/著「ものと人間の文化史141 駕籠」法政大学出版局(2007刊)
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