わたしの講談字引
随時更新!
講談で使われる用語や物語で出会った言葉などを辞書形式でご紹介します。
※記号について
◆は用例や引用、出典を示します
▶は私感です
あ
一龍齋貞水(いちりゅうさい ていすい)
1939年東京生まれ。55年に高校入学と同時に五代目一龍齋貞丈に入門。66年、真打昇進と同時に六代目一龍齋貞水を襲名。2002年に講談界初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。「立体怪談」など特殊な演出にも取り組み、「怪談の貞水」といわれる。2020年12月3日、81歳で没。
腕守り(うでまもり)
布袋に納めたり、腕ぬきに入れたりして二の腕につける神仏の守り札。
◆「畦倉重四郎」、おふみが遠く離れてしまう城富との別れを惜しむ場面で登場
故四代目旭堂南陵一門による団体。五代目旭堂小南陵、玉田玉秀斎らが所属。
▶HPの「講談とは?」には上方と江戸の講談の違いなど、なるほどと思えるような情報が充実しています。
か
1949年設立。現会長は三代目旭堂南陵の弟子である旭堂南左衛門。旭堂南龍、旭堂南舟、旭堂南斗らが所属。
▶HPは若手の方を中心とするオンラインコンテンツが充実しているようです
空板(からいた)
①講談師の前座、もしくは見習いのこと。②まだお客さんが空っぽの寄席の高座で講談を読むこと。まだお客さんが空っぽの寄席の高座で講談を読むこと。
◆「カラ板とは、落語家の前座と同資格で、お客がまだ来ないところで釈台をたたきながら軍談を読んで声を鍛え、お客が来るとすぐ下ろされるのでカラ板といわれています。」(神田山陽(二代目)『桂馬の高跳び』より)
搦手(からめて)
①人をからめとる軍勢。捕り手。②城の裏門。敵の背面。③物事の裏面
◆広辞苑
三代目神田松鯉(かんだ しょうり)
1942年群馬県生まれ。歌舞伎俳優などを経て、70年に二代目神田山陽に入門。77年真打昇進。92年三代目を襲名。2019年人間国宝に認定される。
清書(きよがき)
下書きした原稿などを、きれいに書き改めること。浄書。せいしょ。
◆日本国語大辞典
▶赤穂義士伝「二度目の清書」。大石内蔵助から義父石束源五兵衛へ宛てられた一度目は離縁状、二度目は仇討本懐を遂げたことを伝えるもの。砕けた言い方をすれば、手紙、ということだろうか。
国を売る(くに を うる)
〔侠客の世界で〕その土地・その場所をひそかに去ること。出奔すること。
俥読み(くるまよみ)
ひとりで連続物を読むのではなく、師匠や先輩方などほかの講談師とリレーしながら読んでいくもの。
軍談(ぐんだん)
戦(いくさ)の場面を読むもの。「源平盛衰記」の「扇の的」や「青葉の笛」などが代表的。
高座(こうざ)
講談師が講談を読む場所。舞台上に一段高く演台を設ける。ほぼ落語上演と同じ形式だが、講談の場合はここに釈台をしつらえる。
1968年設立。解散、脱退などを経て80年に再び講談協会が設立される。一龍齋、宝井、田辺、神田、桃川の5派が所属。人間国宝の一龍齋貞水が会長を務めていたが、没後は会長代行を宝井琴桜が務める(2021年4月時)。
講談師(こうだんし)
講釈師とも呼ばれ、高座に釈台を置き、張扇を叩きながら歴史上の事件・人物を題材にし、脚色して物語を読む。
御記録物(ごきろくもの)
侍が中心の物語で、「宮本武蔵」の武芸物や「徳川天一坊」などの政談、「赤穂義士伝」などの仇討物など。
獄門(ごくもん)
刑罰の一種。受刑者の死体、ことにその首を斬 って公衆にさらす刑。公儀に対する重い謀計、主殺し、親殺し、関所破り等の重罪に適用した。首はたいてい浅草小塚原 (こづかっぱら) または品川鈴ヶ森の刑場に送られて、台床の上で三日二夜さらされた。
◆小塚原のさらし首をからかいにいくなど、「天保水滸伝」(「平手の破門」)などに出てくる。
さ
釈台(しゃくだい)
高座に置かれた小さな台。この台の前に講談師が座り口演する。張扇を打つ台となり、また、昔はここに読み物である本を載せ、それを読み上げる形で口演された。本を読みやすいように、釈台の上板を斜めにしつらえてある釈台もある。江戸後期に入って田辺南窓(たなべ なんそう)が本を置かないスタイルをとったところ、それが定着した。
主家(しゅか)
主君・主人の家。しゅけ。
◆「慶安太平記」では主家再興がひとつのキーワードとなっています。
序開き(じょびらき)
長編講談、連続読みの第1回、読み出しの回。
真打(しんうち)
落語と同じように講談の世界にも階級があり、入門がかなうと「見習い」から始まる。「前座」は楽屋仕事をしながら、「二ツ目」になると羽織の着用が許され勉強会などを開くことができる。入門から十数年の修業を積んでようやく「真打」昇進となる。
すみ の 隠居(すみ の いんきょ)
江戸時代、江戸小伝馬町の牢内で、囚人が私的に設けた牢内役人の一つ。また、その者。以前入牢したとき、牢名主をしていて、牢内の法に精通している者などがなる。
◆「畔倉重四郎」(「奇妙院の悪事」)では、重四郎が牢内で牢名主の次位としての「すみの御隠居」という有利な立場であった。
世話物(せわもの)
町人が主体の物語で、怪談(「怪談牡丹灯籠」)や役者物(「中村仲蔵」「淀五郎」)、商人の成功譚(「万両婿」)など。
前講(ぜんこう)
前座さんの高座。
▶番組本編に入る前の開口一番をこう呼ぶようです。
先生(せんせい)
真打の講談師への敬称。
▶軍学を講じた頃の名残だろうか。
速記本(そっきぼん)
落語や講談などの口演筆記録の刊行本。昔の名人たちの口跡を今に残す。
た
徳川家(とくせんけ)
徳川家(とくがわけ)を音読したもの。
▶「慶安太平記」で出会いました。天一坊殿(でん)も同様ですが、なぜ音読?
な
長脇差(ながわきざし)
侠客、遊び人、博打打ち
2018年三代目旭堂南陵の弟子を中心に設立。会長は旭堂南鱗(なんりん)。旭堂南北、旭堂南華、旭堂南海らが所属。
1973年、講談協会から分かれた二代目神田山陽により設立される。80年の協会統一により講談協会と一緒になるが、91年に再び分裂。現在は、二代目神田山陽の門人が所属する。神田松鯉は名誉会長、神田紅が会長。
▶もしかしたら読み方は「にっぽん」かもしれない?
人間国宝(にんげん こくほう)
文化財保護法に基づいて文部科学大臣により指定される「重要無形文化財保持者」としての通称。
神田松鯉は2019年に認定された。
乗物(のりもの)
1. 人を乗せて運ぶ物の総称。馬、駕籠、輿など。
2. 駕籠のうち、引戸や内部に華麗な装飾をほどこしたものを区別して「乗物」という。将軍、公卿、高級武士等のみが乗ることを許された。
◆「白木の乗輿は天子、塗網代は將軍の乗興、飴色網代蹴出しの乗物は宮家の乗物でござる」講談倶楽部 編『徳川天一坊』日吉堂(明44.10)
は
張扇(はりおうぎ、はりせん)
外部を紙で張り包んだ扇。右手に持ち、調子をとるために台を打つのに用いる。
▶軍談では威勢よく、状況場面での打ち方、また、世話物とくに人情話では張扇を打つ回数を制限するなど、流派での決まり事もあるようです。
講談独特の調子で朗々と読み上げる講談口調のこと。しゅらばぢょうしとも。
◆「そこへいくと聞きごたえのあるのは桃川桂玉だ。シラバ(軍談)の蘆洲の川中島をそっくり受け継ぎ、いまじゃ師匠まさりだ。」(神田山陽(二代目)『桂馬の高跳び』より)
▶上記は山陽の著書に登場するお客さんの会話。江戸っ子だから?「シュラバ」でも「ヒラバ」でもなく、「シラバ」と発音しています。リアルですね。
二つ目(ふたつめ)
3~4年の前座修行ののちの階級。羽織の着用が許され、勉強会なども開くことができる。真打昇進までの10年程度の修業期間。寄席などの番組で、前座に続き2番目の出番であったことに由来する。
ま
ましら
猿の別名
◆笹野名槍伝「海賊退治」の中での喩えに登場
卍巴と降る雪の中(まんじ どもえ と ふる ゆきのなか)
卍(まんじ)や巴(ともえ)の模様のように、互いに追い合って入り乱れるように降る雪のこと。
や
弓手(ゆんで)
①弓を持つ方の手。左の手。②左の方。
◆広辞苑
ら
連続物(れんぞくもの)
長編の講談のこと。「畔倉重四郎」「村井長庵」「寛永宮本武蔵伝」「慶安太平記」「徳川天一坊」など。
わ